「あずきちゃん」第92話 捏造新聞に廃刊勧告

1989年は日本の新聞にとって忘れてはいけない年で、朝日新聞のサンゴ記事、毎日新聞のグリコ事件記事、読売新聞の宮崎アジト記事と大きな捏造事件が相次ぎました。ネットを使っている人も少数だった時代ですが、サンゴ事件はマスコミで大きな話題になりました。この頃から新聞への信頼感は揺るぎ始めたのではないでしょうか。

しかし、1991年から朝日新聞はいわゆる「従軍慰安婦」キャンペーンを展開していたので、教訓は生かされなかったわけです。2014年にようやく、朝日新聞が虚偽と認めたものの、国家関係にまで深い傷を与えた責任は棚上げにしたままです。現在、新聞の信頼度は完全に失墜していると言っていいでしょう。
思いかえすと、「ヨーコちゃんの学級新聞」の放送された1997年頃は、新聞の捏造や誤報がたびたび話題に上がりつつも、まだ今のような不信感は抱かれてなかった時代だったと思います。

ヨーコちゃんが

  • みんなが読んで、あっと驚くようなエキサイティングな内容にしなくちゃ
  • あたりさわりのない新聞じゃだめなのよ
  • わたしの新聞で取り上げる店は
  • 高級な趣味の新聞は、一般大衆にはアピールしないってことよね

と一人で盛り上がっていく様子は、捏造記事の誕生を目の当たりにするようで、少々ぞっとしました。
新聞の捏造のみならず、食品偽装、粉飾決算、政治家の金銭問題から研究者のデータ捏造まで、多くの人がいれば不正をゼロにすることはできないのですが、他組織を批判するのと同じスタンスで自己検証をできないような新聞には

廃刊を勧告したいと思います。
と、ここまで書いておいて何ですが、この話の原点は、アニメ制作における脚本家のフラストレーションなのではないかと思っています。自分の脚本が、見かけの派手さだけを求められて改変されていく、それが子供に受けることなんだ、あるいはそれがアニメなんだという演出をされる構造を、新聞に投影したのではないでしょうか。インタビューではこんな話も出ていて、このへんが出発点かな、と(笑)。

それが、信じられない話で、矢吹丈が少年院に入れられて、先輩の西が先に退院する時に、ジョーが初めて優しさをみせて、僕のシナリオでは食堂で飯を食っている時に、スープかなんかを飲めっていうシーンを書いたんですよ。ところが、演出家はそれを娯楽室のテレビを持ってくるなんていうことにしたんですよ。こんな馬鹿なことないでしょ。「なぜだ」って聞いたら、「だってスープよりテレビの方が派手でしょう」だって!
(山崎忠明「日活アクション無頼帳」雪室俊一インタビューより)

日活アクション無頼帖

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