「あずきちゃん」第106話 でもたまには張り切らないと

第57話のあずきのおじいちゃん、第102話のジダマのお母さんと、ふだん離れている家族がたまに会えると張り切って裏目に出てしまう、この第106話もそのような親子の意識のすれ違いを描いた話です。第95話でかおるちゃんのお父さんが松本に単身赴任しているという設定が出てきたときは、単に遠出話にしたかっただけかもしれませんが、それがこんな形になるとは誰が予想できたでしょうか。

いつも雨に降られるかおるちゃんは、実は水を操ることのできる魔法少女だったのです。かおるちゃんの無意識が雨を呼んでしまう…ということは、心の底では勇之助にあこがれていたりするのかもしれませんね。

しかし、この相合傘が父に誤解を生んでしまいます。さらにこのお父さん、ケンのことを娘をいじめる悪ガキと思っていることで、話がさらにややこしいことに。かおるちゃんとお父さんのすれ違いが2本のメインの流れになり、そこにケンとあずきがからむ、4本鎖構造で話が展開します。

かおる父はよりによってあずきに、かおると勇之助との仲を取り持たせようと画策します。クリスマスパーティーのサプライズ演出のため、あずきはそのことを隠さなくてはならなくなります。
一方でケンとかおる父は一触即発の険悪な関係で、ケンがパーティーに行くのを頑なに拒んだため、落胆したかおるちゃんはクリスマスパーティーを中止にしてしまいます。ここにきてようやく大失策を自覚したお父さんは身を退くことに…。

お父さんが松本に帰ってしまったことを話すお母さん(佐久間レイさん)の語りがすごいんです。お父さんが悪いことを知っていながら全く責める様子もなく、パーティーをやり直そうと諭す口調が、何というか女神様です。このシーンの前に、どういう夫婦間の会話があったのかもとても気になるのですが、「あずきちゃん」は子供視点の話なので、大人の事情はカットされて想像にお任せになっています。こういった省略もいつも見事だと感じます。

それにしても、かおるちゃんのお母さんも魅力的ですね。

そして、すれ違っていた鎖が交わるときがきます。終業式の通知表が思わしくなく、隠れて帰宅したケンにサプライズが。そしてこの後の満塁軒の出来事も省略されることで、ラストシーンがより高まるのです。


ここはもう、映像を見てくださいとしか言いようがないです。そして今度は雪を降らせるかおるちゃんは、やっぱり魔法少女だと思います。ちなみに舞台は阿佐ヶ谷駅南口です。
今回は、絵コンテ・演出が片渕さん、作画監督が芦野さんのゴールデンスタッフで、派手に動いたりするところは少ないのに作画がすばらしいです。あまりにも高度に発達したアニメは、実写と区別がつかない…というか実写じゃこんな作品できないでしょう。
しかし演出が張り切ってしまったためなのか、かおるちゃんの目パチに面白いコマがたくさん挟まっていて、何だか気になってしまいました。普通はかおるちゃん属の目パチ中割りはただの楕円になるんですが、ちょっと冒険していて動画でもやや違った印象になっていると思います。


え、コマ送りするなって? アニメの動きが面白いと教えてくれたのが、他ならぬこの演出をした片渕さんなのですが。