遠山の金さんと魔法少女

「遠山の金さん」という時代劇をご存じでしょうか。
江戸時代の江戸・北町奉行所(現代でいう警察と裁判所の合体したようなもの?)のトップである北町奉行遠山金四郎が、奉行所を抜け出して町人の「遊び人の金さん」として活躍する一連のシリーズなのです。
最近、橋幸夫主演の「ご存じ金さん捕物帳」の再放送(時代劇専門チャンネル)が面白くて毎日見ているのですが、これって魔法少女ものの元祖なのではないかと感じてきました。
まず、主人公が二役を演じていて、ふだんはただの遊び人(無職?)として長屋に住んでいる「金さん」が、最後には変身?して北町奉行となり、強大な公権力を行使して悪人を断罪します。これって、小学生や中学生の女の子が変身して魔法少女となり、普通の人間にはない魔法を使って悪と戦う構図とまるっきり重なっているのではないでしょうか。
そして、その変わり身を、一部の側近を除いては誰も知らないというのも、魔法少女のお約束といっしょです。「遠山の金さん」というタイトルも、前半は奉行としての「遠山」姓、後半は町人としての「金さん」という二役の名前を連ねた形式で、「魔法使いサリー」から「魔法少女まどかマギカ」まで延々と受け継がれているのは偶然ではないでしょう。
一方で「遠山の金さん」は犯罪推理ドラマとしての性格も持っているので、町人姿の金さんが怪しまれずに犯罪の核心に迫っていき、桜吹雪の刺青を利用して自ら法廷での証人を務めるという独自性もあります。ここは魔法少女ものとは大きく違っているところです。
魔法少女ものはしかし、初期から魔法の持つジレンマ、例えば魔法で解決すると思っても何の役にも立たなかったり、変身から戻れなくなったり、さらには戦闘で命を落としたり(マミさん…)というドラマも多く描いてきました。遠山の金さんは比べると定型的で、御白州(法廷)から先はほとんどハプニングは起きません。まあ、そこから先で何かやっても、時代劇ファンの不興を買うだけのような気もしますが。魔法少女ものは、より進化した遠山の金さんと言えるのではないかと思います。
子供の頃はTV時代劇全盛時代で、祖父母と毎晩時代劇を見ていました。魔法少女ものだけでなく、特撮ヒーローものも同様に、時代劇の系統の先に存在しているような気がして、思えばどれも同じような気持ちで見ていたのかもしれません。