ネットで「震度とマグニチュードの関係」を検索すると、「震度とマグニチュードは、地震の性質を表す異なる指標であり・・・」というような結果しか出てきません。そんなことは先刻承知で、両者の詳しい関係を知りたいのです。
というのも、大昔、高校の「地学」の授業で、ほとんど教科書を使わないO先生が、自作プリントの教材で
- 地震のマグニチュードは、震源から100kmでの震幅の対数と関係している。
- 震度も観測点での震幅と関係するが、実際の値は体感で決めている。
といった説明をして、具体例の表も出ていたのを記憶しているのですが、その後こういった話を聞くことはなく、検索しても出てこないので、不思議に思っていました。
最近ようやく、これらの定義が時代と観測機器の変化に伴い変わってきていて、歴史的変遷を調べることが必要だとわかってきました。
マグニチュードは元々、1935年頃に地震計の振幅の対数で定義したもの(リヒター・マグニチュード)から始まりました。日本では、河角廣という地震学者が1951年に、震度とマグニチュード、震央距離の関係を数式に近似し、係数を最適化したものを提唱し、これが長年使われてきたようです。1984年に宇津徳治という地震学者が発表した論文「震度-震央距離-マグニチュードの関係」に河角の式が以下のように紹介されています。

これを見ると、震央距離Δ=100kmでI=Mkという単純な式となり、O先生のプリントはこのへんのちゃんとした学会情報を基に作られたと思われます。河角の式としては、他に震度と加速度を結びつけるものがあることもわかり、元々体感や建築被害で定義された「震度」を数値として評価する礎を築いた方のようです。しかし、この引用部だけでもマグニチュードが3種類あり、さらに多くのマグニチュードの定義もあって、どのように使い分ければよいのかは正直よくわかりません。
現在では、マグニチュードは震源の破壊と直接関連して議論されていますし、地震波測定も2軸の地震計から3軸の加速度計に置き換えられ、震度の定義も加速度で行われるようになりました。震度分布も近似式ではなく、実際の地中の構造を考えたコンピュータシミュレーションが可能になり、現在の緊急地震速報などが実現されているのだと想像しています。
震度とマグニチュードの近似関係式は最早不要になっているのかもしれませんが、河角の式をベースにして大規模な地震データを取り入れて解析した、1995年のMolas & Yamazakiの式

が最近でも割と使われているようです。PGAがピーク加速度であり、震度と結びつける河角の式(計測震度I=2 log10(a)+0.7、aが加速度(cm/s2))を使えば、震度とマグニチュードの近似関係が得られます。Molas & Yamazakiの式のlog10(PGA)をlog10(a)=0.5(I-0.7)と置き換えれば、あら不思議、計測震度Iとマグニチュードは(震源からの距離rや震源深さhが変わらなければ)線形でしかも係数がほとんど1の関係が得られます。本当にこんなことがあるんでしょうか。
ここ数日、熊本県のほとんど同じ震源域から多数の地震が発生するという事象が起きています。これは震度とマグニチュードの関係を検証するチャンスではないかと思い、データをプロットしてみました。

データは
震源データベースと震源マップ(リアルタイム版) | 地震関連情報
から取ってきたものです。一連の余震の震源は全て地表付近(震源の深さ10km程度)なので、震度としては単純に最大震度を採用することで、震源からの距離rと深さhをほぼ統一した条件での比較になるのではないかと考えました。(重なるデータが多数あるので、ぴったり重なるデータは横軸を若干ずらしてプロットしています)
やはり、震度とマグニチュードは傾き1の直線にだいたい乗っていると思われます。Molas & Yamazakiの式でr=h=10km、c=0(観測地点での地盤補正パラメータ)としたものもプロットしてみましたが、傾向がほぼ合っています。rを小さくすればもっと合いますが、もともと近似式ですし、r=0が特異点になるため震源ごく近傍で使うべき式ではないと思われるので、傾きが合っていることを確認できることで十分でしょう。
以上の考察からざっくりと、
- 震源の距離、深さが同じであれば、震度はマグニチュードと線形で傾き約1となる。(そもそも、マグニチュードが1増えるとエネルギーが10^(3/2)倍になるという定義がこのような関係を意図していたのでは)
- 今回の熊本のような浅い直下型の地震の場合(r=10kmくらい)は、大雑把に震度とマグニチュードは同じくらいの数値になる。(たぶん、M7で断層破断面の長さが数10kmになるので、それ以上に大きな地震は点震源近似からかなり外れてくるでしょう、そんな地震は海溝でしか起きないでしょうが)
- 震源からの距離が100kmくらいになると(log10r=2となる)、浅い直下地震に比べると震度は2程度(加速度は1桁)落ちる。
という程度は言ってもよいのではないか・・・という感じがします。(もちろん、震度が0から7に限られていることや、地盤の状態や地中の構造によってプラスマイナスが出ることは承知のうえで)
日本に住むうえでは知っておくと便利な結果ではないかと思いますし、「震度」の出ない海外の震災を想像するにも役立つと思うのですが、ほとんどこういう話は聞きません。自分の出した結果が間違っているのかもしれませんが、邪推をすると地震の専門家はあえてこういう話を避けているのではないでしょうか。というのは、この手の話は原発などのリスクアセスメントに直結し、反対・推進いずれにしても怪しい議論に巻き込まれる可能性がありそうなのです。
なお、紹介した論文は東京大学リポジトリからpdfがダウンロードできましたが、今日はサーバが落ちているのかアクセスできません。興味ある方は検索してください。
- 宇津徳治、震度-震央-マグニチュードの関係、地震研究所彙報 Vol.59, p.219 (1984)
- G. Molas and F. Yamazaki, Attenuation of Earthquake Ground Motion in Japan Including Deep Focus Events, Bull. Seismological Soc. Am., Vol.85, p.1343 (1995)
自分は東日本震災で震度6弱を、起震装置では震度7も体験したことがありますが、今後も震度6以上は御免被りたいですね。


































