出○監督

雪室さんとは歴史上最もそりが合わなかったと思われるアニメ監督、故・出崎統に関する本「出崎統の世界」

アニメーション監督 出崎統の世界 ---「人間」を描き続けた映像の魔術師

アニメーション監督 出崎統の世界 ---「人間」を描き続けた映像の魔術師

を読んでみました。雪室さんとの確執に関する新情報を期待していたのですが、それについては、「日活アクション無頼帖」
日活アクション無頼帖

日活アクション無頼帖

に書かれている以上の情報はなく、わざわざ買って読むほどのものではなかったような気がします。

シナリオだからといって、やたらと台詞でつないだり、つまらないことを書くくらいだったら、このドラマを本当に5行位の詩で書いてくれてもいいよ、あとは僕が全部やるから

まあ、こういう考え方は理解はするけど、それなら雪室に書かせるなと言いたいですね。確かに雪室さん降りてしまうのは納得です。

この本でいちばん面白かったのは富野さんの出崎評です。

〜統ちゃんは悪戦苦闘して、『ガンバの冒険』などはその真骨頂になった作品でしょう。なんとか次、その次で作品名が残るものを作りたいと思いながら、素材に恵まれなかったのか、我を出しすぎたのか、バランスをとることが最後までよく分からなくて苦戦していると感じます。50歳を過ぎてからの監督作を観ると、そういう迷いが明らかで、「ああ、手法に陥ってしまったなあ」って思います。だけど、そういう作品でもまわりの人がほめんるんですよ。もっと違う素材なりテーマなりで、出崎統はこれなら描けるぞっていう企画があってほしかんたんだけど、それに恵まれなかったのは気の毒だ、と思います。
 それが僕にとっての出崎評であるし、出崎統っていうひとつの才能から学んだことです。

という、愛憎こもった一文は、ある意味冷徹に歴史的評価を行った結果でしょうね…。死んでしまうということは、こういうことでもあります。