アニメーションと仮現運動

パネルディスカッション「アニメーションと仮現運動〜この似て非なるもの?」を見てきました。正直、この分野の理解と共通認識がこれほど進んでいないのかということに頭が痛くなりました。

  • フィルム上映でコマ間に黒ブランクが挟まれているのに認識されない。
  • 静止画の連続提示が運動として認識される(仮現運動)。
  • 60fps、24fps(実写フィルム、1コマ作画)、12fps(2コマ作画)、8fps(3コマ作画)の違い。

といったあたりが、うまく整理もされず「残像」「仮現運動」といった言葉でなんだか適当に説明されているような状況のようです。

表示装置については液晶画面で黒ブランクがなくなっても同じように見えるという話がありましたが、最近のDLPなんてRGBの時分割表示でPWM変調による光強度呈示だったり、それでもちゃんと見えてるのって、皆さんあまりご存じじゃないんでしょうか。

信号処理を専門とされている吹抜さんの講演が理系の人しかわからなかったでしょうが、大変クリアでした。標本化周波数が60Hz(フリッカー限界値)を超えれば、画像は直接肉眼に入っている視覚と全く変わることがない、すなわち「仮現運動」のようなものを導入する必要は全くないということです。このことと、他の演者の「短期仮現運動」の話とはどこまでオーバーラップしているのか理解が及ばず。

しかし、アニメの2コマ、3コマはこれに比べればはるかに低いレートであり、何らかの仮現運動?効果があるというのは理解できます。そしてここがアニメ制作者の技術として経験を体系化したいということも。

片渕監督が実例のアニメ動画を見せながら解説してくれたのが、大変面白かったです。会場にいた森田宏幸監督や、深井さん(ブレインズベースの方)のツッコミも面白かったです。

  • 3コマ作画の実例、経済的にやむを得ないが、うまく作るとシャープな動きになり見て快感がある。等間隔のコマ割りでなく前づめして後を省略する技法がある。3コマ作画は1コマ1コマの絵が目に残る。3コマ作画は「動く」限界を下回っていると感じるが、そこをどうにかするのが技。
  • 3コマ作画の実例として金田さんのブライガーOP、森田監督からコマ送りしないと素人にはわからないとツッコミあり(笑)。
  • 3コマ作画はプロには静止画の連続(動いていない)に見える。
  • 2コマ作画の実例、おとなしめのアニメほど2コマ作画を使いたくなるとのこと。海外作品「イリュージョニスト」など。キャラクターの演技には、経験的に2コマ作画が理想的。
  • 1コマ作画の実例、ディズニー「眠りの森の美女」のダンスのシーン。ロトスコープを基にしているが、アニメータによる時間的「整列」作業がないとこのようにうまくは見えない。機械的に実写をそのままサンプリングしたらたとえ1コマ作画でも「ピョコタン」になるだろう。
  • 1コマ作画の失敗例、海外作品「アラビアンナイト」過剰で見ていて疲れる。
  • キャラクターは2〜3コマ作画でも見れるが、背景や自動車などは1コマにしないと飛んで見える。

情報処理、心理学、映像作家などの狭間にあって、なかなか整理のついていない分野であるようでした。とても面白かったです。