「サザエさん」作品No.7250 「父さんだけの三連休」


サザエさん」は最近、雪室さんと城山さんメインの体制になりつつあるようで、番組全体のクオリティがぐっと上がってきているような気がします。その中でも、ちょっとすごいと思った3月22日放送の「父さんだけの三連休」を取り上げてみたいと思います。脚本は雪室さん。演出の石山貴明さんは、たぶんフリーで活動されている石山タカ明さんで、最近「サザエさん」に参加されているようです。これもテコ入れなのかもしれません。雪室さんとはTVシリーズメイプルストーリー」の監督のときに仕事をしています。
【前日】

波平が突然、三日間の有給休暇をもらって明日から家にいることになりました。有休消化ということで、ちょうど年度末の放送になったのは偶然でしょうか? カツオは、父さんがいると家で勉強しないとならないと、露骨に迷惑そうです。しかし、それだけでは済みませんでした。
【1日目】


波平が遅く起きると、カツオが体操着を忘れて学校に行ってしまったことがわかります。波平は、たまにはということで、タラちゃんを連れて学校に忘れ物を届けに行きます。偶然、廊下で担任の先生に会い、どうせなら授業を見ていかないかと誘われます。苦手な算数の授業を参観されるカツオは、完全に自業自得でしょう。
【2日目】


2日目はワカメの希望で、放課後に映画を見に行くことになります。ファンタジー映画(今回タイトルは出ませんでした)に退屈した波平は、いびきをかいて居眠りをします。迷惑そうだったワカメでしたが、珍しく父さんと二人だけで、それなりにうれしそうではありました。
【3日目】

3日目はサザエとフネに元々外出の予定があり、カツオとワカメは学校なので、波平は一人留守番になります。そこに、裏のおじいさんが回覧板を回しにやって来ます。裏のおじいさん宅で碁を打ちながら、おじいさんは磯野家のように賑やかなのがいいと、波平をヨイショするのでした。


波平が家に戻ると、学校から帰っていたカツオとワカメが、連休最終日のために用意してあったビールとつまみでお酌をします。サザエたちの戻る頃、気持ちよく酔った波平は、ちゃぶ台をガタゴトさせて、電車通勤の擬音に興じるのでした。
【感想】
この話の基になった原作は、ラストシーンの電車擬音だと思います。波平は、よほど気持ちよく酔わないとこんな風にならないだろうということで、ラストから逆向きに組み上げていったのが、この作品だと想像します。ふつうならば、このどれか一日分のエピソードの後に酒を飲ませればいいと思うのですが、波平の気持ちを盛り上げるために、三日間三様の休みを持ってきてしまうのが、物量を惜しまない雪室さんらしいところです。
時間を計ってみると、前日(タイトルコール込)が1:01、1日目が2:08、2日目が1:34、3日目が2:12となっていて、三日間に均等に時間を配分しています。そして、7分間という短い時間に大量のエピソードを入れておきながら、詰め込みすぎや性急な感じが全く無く、ゆっくりした休暇を一緒に楽しんでいるような印象にさえなります。演出もよかったのだと思いますが、かなりあり得ない完成度に感じました。
さらに、この話を多くの人は、最初はカツオやワカメの側に立って見ると思いますが、録画した番組を見直してみると、だんだん波平の気持ちになってきます。三日間の楽しい気持ちが重なったからこそ、あのラストシーンにつながるんだと、全く違った印象になります。どちらの立場で見るかによって、違った「行間」が見えてくるかのような、とても精密に書かれた作品であることに驚かされます。
サザエさん」は「ながら見」をするマンネリ作品と思っていると、単に次々とエピソードが展開するだけで、この話も「波平の電車擬音が出た〜」で終わってしまうだけかもしれません。でもそれは、すごくもったいないのです。脚本家が気になるようになってきた方は、ぜひ、毎週録画して、じっくり見直してほしいと思うのであります。