「あずきちゃん」第55話 ニワトリとタマゴの歴史

1967年「ハリスの旋風」 第53話「アメラグの卵」

卵にレーザー光線を当てると、怪人アメラグが孵り、暴れまくるというTV番組に、国松の弟が夢中になっています。国松が、同級生・小沢の落書きを見て「アメラグの卵」だと思ったら、実は小沢の父はアメラグ(死語:現在のアメフト)の先駆者で、そのボールだったことがわかります。大学にアメラグを見に行った国松は、ハリス学園にもアメラグ部を作ろうと駆け回る…という話になります。この頃から丸いものを見るとタマゴを連想する回路があったことがわかります。
1974年「ミラクル少女リミットちゃん」 第17話「おんどりのタマゴ」


縁日で、ボスが妹にピンクのひよこを買ってあげたのですが、縁日のひよこはオスなのでタマゴを産みません。ニワトリを飼い続けるために、産卵偽装をするボスでしたが、ついに親にばれてしまいます。ボスはニワトリを養鶏場にまぎれ込ませようとするのですが…。縁日のひよこ、頭に止まるニワトリ、おんどり、ニセの産みたてタマゴ、タマゴかけごはんなど、これはニワトリ&タマゴものの原点となる作品ですね。存在価値の無いおんどりというテーマでもあり、辻さんなら最後は妹の身代わりになって死んでしまうダークなトラウマ作品にしてしまいそうですが、雪室さんならではのコメディ調の暖かい作品になっています。
1984年「とんがり帽子のメモル」 第9話「マリエルの目玉焼」


マリエルの家で「ポシャ・ジュー」と作られる目玉焼を見たメモルたち。リルル村の住民も目玉焼に興味津々ですが、森の動物たちとは共存関係にあるのでタマゴを食べるわけにはいきません。発明家のコロンパスは動物のタマゴを使わない「コロンパスのタマゴ」を作ろうとしますが、殻の中に身を入れる問題に突き当たります。そこにピンポン球が漂着したりと、なんだかわからないけど面白い話です。
1990年「もーれつア太郎(2作)」 第18話「王子と玉子 どっちがえらいのココロ!?」

デコッ八が文通をしていた姫香ちゃんはお金持ちを装っていましたが、実は乾物屋の娘で、タマゴを売っていたという話です。乾物屋でタマゴを売っているという感覚はさすがに自分にはわかりませんが、1980年代にはまだパック入りでない、かごに山盛りになったタマゴを店頭で見た記憶があります。あれは乾物屋だったのでしょうか。今そういう写真をネットで探しても、外国の写真しか出てきません。乾物屋自体は御徒町アメ横などで見かけますが、今はタマゴは扱っていないですよね…。
1992年「キテレツ大百科」 第198話「おーっと! コロ助がタマゴをうんだナリ」


コロ助になついてしまった迷子のニワトリを巡る物語ですが、「リミットちゃん」のネタと少しかぶっています。しかし、キテレツだけでなく、ブタゴリラやトンガリ一家が関わることで、さらにドタバタになっています。タマゴかけごはんを食べたブタゴリラの父ちゃんの「思わず涙がこぼれ落ちるうまさだぜ」は後のマスオさんにつながりそうです。ロシニョールみたいな色のニワトリですが、意外なオチが待っています。
1994年「平成イヌ物語バウ」 第21話Bパート「旅はつらいよ! 田舎道」


田舎のおばあちゃんの家に遊びに行ったさやかですが、Aパートで勝手に追いかけてきたバウのおかげで、電車からは追い出されて歩くはめになります。そしてBパートからなぜかのニワトリ乱入。ニワトリはバウの頭が気に入ったようです。さらに川に落ちたり、蜂に襲われたりで、最後は桃太郎状態で従者を連れて家にたどり着きました。イヌとトリまできたら、やはりサルは外せないですね。おばあちゃんの家は西の方だったということでしょうか。
1995-96年「あずきちゃん」 第7話、第25話、第55話

箱根の黒玉子を食べ過ぎて救急車ではこばれたり、八王子を八玉子と読み間違えるのは、両方ともまことでした。小ネタでもタマゴは時々出てきます。本題の第55話はこの後に。
2007年「サザエさん」 作品No.5875「父さん発明の母」

いわゆる「全自動タマゴ割り機」の回です。タマゴ割り機は初登場ですが、マスオの「機械で割ったタマゴはひと味違いますよ」は長年の歴史を引き継いだギャグと言えるでしょう。本放送を録画したDVDが再生できなくなっていて、大変悲しいです…。
2014年「サザエさん」 作品No.7146「ホリカワくんの卵」


原作は波平が鶏小屋を作る話だと思いますが、1960年代くらいまでは、家でニワトリを飼うのは珍しくなかったようです。おんどりネタの歴史を受け継いだ作品で、ホリカワくんの登場でひと味違ったものになりました。ワカメが「オスだったらどうなるの」と危険な発言をしていましたが、養鶏場にホリカワくんが引き取りに行かなかったらどうなったのか…はよい子は決して検索しないでください。「怪獣みたい」というホリカワくんの絵は、画家ルイス・ウェインがモデル説がありますが、よくわかりません。
楽しくなって、ついつい突っ走ってしまいました。他にもあるとは思いますが、記憶に残ってたのはこのくらいでした。多いといえば多いですが、何せ3000本以上の母数からするとそれほど多くはないのかもしれません。多少ネタがかぶっているとはいえ、キャラクターや人間関係の違いでそれぞれの面白さを持つ作品に仕上がっているのは、さすがでしょう。
しかし、ネット検索程度ですが、調べてみてもいつ頃家庭でのニワトリ飼育が盛んだったのか、いつ頃乾物屋がタマゴを扱わなくなったのか、産卵日が記載されるようになったのはとか、タマゴパックの歴史とか(トレーだけのとか、紙製のとか、プラスチック製のとか、いろいろあったと思いますが)が意外と出てきません。「鶏卵の流通 歴史」などでググっても、現在のシステムは出てくるのですが、ほんの一昔前のことが全然出てこないんです。どなたか、卒論でまとめてみませんか?
それと、はたして実際にニワトリは頭に止まるのかというのも謎でした。雪室さんの作品以外でも、頭に鳥を乗せているアニメがありますが…。どっちにしても痛そうではあります。
あずきちゃん」第55話 「もうケッコー! ヨーコちゃんの飼育係!?」
ようやく本題にたどり着きました…


夏休み中の夜に、だいずが学校のニワトリ、鳥衛門のエサやり当番を忘れたことを思い出します。しかたなく、あずきが付き添って学校に行くと、既に門は閉まっていましたが、なんと鳥衛門は小屋から出ていてあずきの頭に。仕方なく、野山家で翌日まで預かることになります。

お父さんとお母さんも被害に…、というか、近所の人はみんな迷惑だったでしょう。野山家の寝室は珍しいかも。

しかし、翌日学校に行ってみると、鶏小屋には鳥衛門が。見分けるポイントは脚の色くらいです。ニワトリが二羽出てくることで、双子のトリックの如く、事情は一挙に複雑化します。これは今までになかったパターンです。ちなみに迷子のニワトリには役名が無く、EDには「鳥衛門」しか出てきません。

困ったとき(脚本家が?)のヨーコちゃん頼みということで、イヌ、カメに続きトリが榊原邸にごやっかいになることになります。ニワトリを運ぶのに満塁軒のおかもちを使ったため、こういう珍しいシーンも見ることができました。ちゃんと「古いおかもち」と言っていたので、満塁軒の出前における衛生上の問題は無いと信じましょう。
引き取ったヨーコちゃんですが、サブタイトルの「ヨーコちゃんの飼育係」という微妙な言い回しは、ヨーコちゃんが係をやるわけではなく、もちろんヨーコちゃんを飼育するわけでもなく、ヨーコちゃんの下僕の飼育係だったのでした。そのわりに思ったほどの存在感ではなく、あっさりいなくなってしまいましたが。
一方かおるちゃんは…

プライドも何もなく、鶏の世話を口実にケンちゃんとデートができて大喜び。二人とも、家がお店で庭もなく、こういうシチュエーションが結構うれしいのでしょうね。


あずきも、恋敵の本拠地でデートという、不思議な展開になりました。
今回、タマゴの話もほとんどからまなく、おんどりなのにニワトリの運命もたいした問題ではなく、ではなぜこの話に「ニワトリが二羽」も出てきたかということですが、おそらく「鶏が取り持つ縁による庭でのデート」ということではないでしょうか。鳥衛門という名前も一度聞いたら忘れられないです。ホリエモン命名は2004年なので、ホリエモンから取ったわけではないですよ。