「あずきちゃん」第108話 窓さん

この話は「窓さん」を探す話なのです。おそらくこの話を予備知識無しに見た人は「窓さん」が何なのか、よく理解できないと思うのです。Microsoft Windowsの窓辺ななみさんではないのです。

今回のゲストキャラであるビリーさんがその鍵を握るわけですが、ビリーは、勇之助のお父さんの知り合いのカメラマンで、和服の撮影に来日していたのでした。

今でこそ外国人の声優さんやアニメスタッフもいますし、日本人の声優さんでもそれなりに英語の話せる方もいますが、この当時本当のネイティブの方を声優に起用する例はほとんどなかったと思います。ましてや、英語のセリフのためではなく、外人っぽい日本語セリフを言わせるために外国人を引っぱってくるのは異例です。
単なる推測に過ぎませんが、笛を吹くとなればプロ奏者の吉澤実さんを連れてきて(あずき49話)、ピアノの演奏があれば世界的名演奏家アシュケナージに弾かせてしまう(ピアノの森)、小島監督の仕業ではないでしょうか。外国人が出てくるのは香月先生と結婚するケントさんに続き二人目で、ケントさんは日本人声優さんが演じていたので、このときに外国人を起用してみたいと思った…のかもしれません。
ビリーの声を演じたジェフ・マニングさんはNHK英会話教室に出演していたので、おそらくNHKつながりで声がかかったのではないでしょうか。出演歴を見ても、アニメやゲームに出たのは「あずきちゃん」が初めてで、アニメ声優として活動しようとしていたわけではなさそうです。
ジェフ・マニング - Wikipedia
脚本を書いていたり絵コンテを進めていた時点では、おそらく本物のアメリカ人が演じるということは想定していなかったと思います。変な日本語を使うネタがたくさん出てきますが、発音がうますぎるので、日本人が外人風に話すよりもよほどナチュラルです。変な外人をフィーチャーするのは雪室さんの得意パターンでもありますが、自分の知っている範囲では日本人声優が外人風に演技しているものばかりで、雪室さんも放送を見たときは驚いたのではないかと想像しています。
ところが…、日本語には外来語があるのですよ。この話で出てくる語は「モデル」「イメージ」「カメラ」「ファインダー」です。「イメージ」がカタカナ風に発音されているのを除いては、外来語はかなり英語に近い発音「model」「camera」「finder」でした。そして、日本語につなげて英単語を発音するとどうしてもちょっと変わってしまいます。「model」末尾の「l」が聞き取れないくらい弱くなって「マドゥ」「マドさん」になってしまいました。「イメージ」の例を見てもカタカナ風の発音はできる方なので、聞き取れないことを承知の上でこのような演技にすることを、監督や音響監督が決めたのだと想像しています。
自分も初めて見たときにこの発音を聞いて、そしてEDスタッフに外国人らしい名前が出ているのを見て、「あずきちゃん」はそんなに真面目に作っている作品だったのかと結構衝撃を受けました。

今見ると「え〜あずきが大和撫子?」と思わず言ってしまうのですが(笑)、今回はいろいろ苦労もしたようなので認めてあげることにしましょう。あずきが持っている四角い物体は、窓ではなく、撮影に使うレフ板です。

そしてこういうコンテを書くのは片渕さんの趣味であろうというのも、今見て想像していることだったりします。