「サザエさん」OP曲と絶対音感

毎週見ている「サザエさん」ですが、OP主題歌を聞くとき、いつも音程が狂っているような違和感を感じていて、いつかちゃんと調べようと思っていました。後奏の部分がつぎはぎされていて転調がおかしいという話は知っていますが、それは別にして、歌の最初からおかしな感じがするのです。
1年ほど前に「サザエさん音楽大全」が発売されて、ちゃんとした音源とステレオで聞くと、TVよりは正常に聞こえる気がします。まずは、譜面を取ってみようと思い、キーボードの音と比較しながら音を取ってみましたが、どうもしっくりきません。ニ長調で取ってみましたが、いまいちなのでネットで調べてみると、「ニ長調」と「変ニ長調(=嬰ハ長調)」の2説があります。
自分には判定できないので、ピッチを検出できるソフトを探して、フリーソフトSound Engineのピッチチェッカーにかけてみましたが、伴奏やハモりのある場所ではあまりちゃんと働いてくれません。最後の「♪今日もいい天気〜」の「き〜」のところが、ハモりも無く、わりとちゃんと取れていそうです。結果が次の図です。

緑色のドットが検出した音高で、ピンクの線が判定された正しいピッチです。「き〜」の音は「D=レ=ニ」の音に判定されていますが、音高はずいぶん下がっていて「D♭=レ♭=変ニ」に近いところまで行っています。音程の低下は30セント(半音の30/100)くらいで、50セントまで行くとちょうど中間になるので、「ニ長調」「変ニ長調」の2説があるのはなるほどといったところです。ちなみにTV版の「き〜」とそれに続き後奏の音は両方とも主音なのですが、後奏の音はきっちりD♭になっています。よく「半音下がる変な転調」と言われますが、実は「半音の70%くらい下がる異常な転調」なわけで、むしろ「非12平均律」や「微分音」の世界です。アナログ時代のテープのつぎはぎによるものと言われていますが、これが耳に慣れてしまっているというのも、面白い話です。
TV音源とCD音源にどのくらい違いがあるかですが、ピッチチェッカーは差がわかるほどうまく働いてくれないので、スペアナで比較してみました。


これは「き〜」のところで、「き」の基本振動ピークは580Hzと表示されていますが、周波数分解能はあまり高くなく、ピッチチェッカーとも比較して実際のピークは575〜580Hzくらいだと思います。正しいD♭が554Hz、Dが587Hzですので、30セント下がったDが577Hzになります。
見た感じ、TV音源とCD音源はほとんど違いがないことがわかります。録音時の元の音源は、おそらくこんな狂った調律で演奏されたわけではないと思いますので、CD化にあたっては、わざわざピッチをずらして、TVに合わしているのではないかと想像しますが、真実はどうなのでしょうか。ちなみに、CDに入っている他のBGMなどは、ピッチチェッカーで見てもきっちり正しい音程になっています。45年も続く番組は、不思議なことばかりです。
ではなぜ、TV版の方がよりおかしく聞こえるのでしょうか。自分が特におかしな感じを受ける場所は冒頭の「♪お魚くわえたドラネコ追っかけて」あたりと「♪みんなが笑ってる」から入るストリングスのあたりです。おそらく、CD版では前奏があることで下がった音高に瞬間的に慣れてしまうことと、CD版を聞くときはちゃんとした再生装置で音量を上げて聞いているので、編曲全体の和声感を耳が維持したまま正常に聞こえるのではないかという気がします。
ということで、自分がTVを見るときに感じていた違和感は、おそらく自分の絶対音感が、下がった音高に反応していたのではないでしょうか。楽器をやらないので、絶対音感など持っていないと思っていたのですが、ちょっとはあるのかな。カラオケでピッチを変えて歌われると、すごく気持ち悪く感じますし…。
以下参考文献です。

サザエさん」が全然おかしくないという方は、こちらをどうぞ。耳慣れていない音階の違和感を堪能できます。
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