サザエさん作品No.7008「まわれネジリン棒」 セル画最終回

サザエさん」がついに完全デジタル作画になるそうで、9月29日の「まわれネジリン棒」がセル画の最終回となりました。「サザエさん」は現在唯一のセル画作品でしたので、これが日本の最後のセル画作品ということになるかもしれません。
その話が、お客が来なくなった床屋の閉店の話でした。

近所の床屋?が臨時休業だったりして、カツオがバスに乗って他の床屋に行くという話から始まります。これがおそらく原作4コマかと思います。



これがネジリン棒の正体でした。「ネジリン棒」で検索してもハゼ科の魚が出てくるだけです。「ねじりん棒」という床屋さんの映画があるようなので、業界では通じるのかもしれませんが、自分は材料力学みたいの(丸棒のねじり)しか想像できませんでした。



もちろん脚本は雪室さんです。



フネ「ぜいたくです」、「叱ってやって父さん」とサザエ。しかし、カツオの頭を見た波平は「なかなか腕のいい床屋さんじゃないか」「今度わしも行ってみよう」とえらく気に入った様子です。



カツオの案内で床屋に行きます。路地裏の目立たないところにある古びた床屋さんでした。「道路が渋滞して、この辺りでバスが止まっちゃったんだ」というのが、この床屋を発見した理由です。目立って誰でも見つけるような床屋さんでは、この話が成り立ちませんし、でもカツオには入ってもらわなければなりません。雪室さんの脚本の特徴は突拍子もない切り口にあると思われがちですが、こういった細かい論理性を手がかりとして、いろいろな飛躍が生み出されているように感じます。



年老いた床屋さんは「お客さんですか?」「今日は誰も来ないと思っていました」と閑古鳥が鳴いている状態です。



「若い者は美容院に行って商売上がったり」「客はお年寄りと子供ばかりです」と言って、そういえばとカツオのことを思い出します。波平がカツオの父とは知らず、「ハキハキして礼儀正しくて、感心しました」とカツオのことをほめます。



しかし、ネジリン棒は不調で時々回転が止まります。叩くと動き出しますが、「このネジリン棒が動かなくなったときは、店をたたもうと思ってます」と波平に話します。
例によって密度が高く、ここでまだ3分しか経っていません。さらに展開する後半は思いっきり省略して最後に飛びます。



ついにネジリン棒が動かなくなったことを知らず床屋を訪れたノリスケとマスオ。ノリスケはネジリン棒に思い切りタックルを…。



キャプチャ画像ではわかりません(笑)が、ネジリン棒がまた動き出しました。まだまだ閉店させてはもらえないようです。

この話ですが、セル画最終回に合わせて書かれたような第一印象でしたが、よく考えると違う気もします。セル画の終焉は否応ない「一つの時代の終わり」であるのに対して、床屋さんの話は「腕はあるのに時流に乗り損ねた職人」なんですよね。リンク先のエッセイ「アニメライターの死」で紹介されている「高齢になると仕事が来なくなるアニメ脚本家」の実情とも重なっていると思います。
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というわけで、推理の結論は「たまたまこの話がセル画最終回近くにあった」です。でも、この作品がセル画最終回というのは、知ってて見た人には最高だったのではないでしょうか。