「あずきちゃん」第11話 レア脚本家
「あずきちゃん」第11話
「レア脚本家」とは、「サザエさん」で現在メインの脚本家である雪室さん、城山さん以外の脚本家を十把一絡げにして言う言葉で、匿名掲示板などで最近よく見かける表現です。新しい脚本家が登用される理由としては、新しい作風を吹き込みたいということもあるでしょうが、保守的な「サザエさん」においては、主にメイン脚本家の負担軽減と若返り(リスク分散)を考えてのことではないかと想像しています。そして、レア脚本家には、最初は季節ものの原作が割り当てられることが多いように感じます。慣れていない脚本家が書きやすいようにという配慮でしょう。
「あずきちゃん」第11話は、全117話中唯一、雪室さんが書いていない話なのです。浦畑さんはおそらくこの当時マッドハウス所属で、今も脚本家として活躍しています。「咲」は見ましたが、1期と2期のどちらが実力なのかはよくわかりません(笑)。若木さんは検索しても他の作品が出てこなく、新人だったではないかと思われます。起用の理由としては、「サザエさん」のレア脚本家と同じ事情だと思います。雪室さんの作品年表を見ると「あずきちゃん」1期は「キテレツ大百科」と重なっており、
http://www.asahi-net.or.jp/~zs2t-ikhr/midori/yukirev/yuki_works_313.pdf
この頃「キテレツ」もほぼ全話書いていたので、週2本ペースということになります。多作の雪室さんをもってしても、これはかなり上限に近いのではないかと想像します。
第11話に、イベント性が高く書きやすい原作第11話「はじめてのデートの巻」を持ってきたのも、レア脚本家対策だと思います。その甲斐もあって、第11話はかなりよい出来になっていると感じます。このレベルなら、4本に1本くらい書いてもらえるのは大歓迎だったはずです。
ところが、この浦畑・若木ペアはその後一度も登場することなく、本当にレア脚本家になってしまいました。何らかの誤算があったのだと思いますが、よくわかりません。
あらためて第11話を見ると、遊園地に二人でデートに行く話から、証明写真コーナーで写真を撮る話までは、ほぼ原作通りです。一方で、二人で行くことになるまでの話が、原作では勇之助がヨーコちゃんのおじさんからもらったチケットで、あずきしか誘わなかったという奇妙な話です。アニメではこの点の紆余曲折をちゃんと書き直しています。また、ケンの野球の試合や、日光写真の話も追加されていて、このシリーズらしい密度感が実現できています。
日光写真、古ッ! と思いましたが、よく考えてみると今でも自分は黄色い灯りの部屋で同じようなことをやっていたりするのでした…。