「あずきちゃん」 第35話 誤った情報による被害

生殖は生物にとっての最重要課題なのです。「赤ちゃんはどこからくるの」かは、小学生にとって大きな疑問にもかかわらず、誰に聞いても教えてくれない、不思議な問題でした。今はそうじゃないかもしれませんが…。
第35話は基本的に原作17話「赤ちゃんはどこからくるの? の巻」通りに進みますが、アニメでは家庭科の吉野先生が出産して、あずきや勇之助が病院にお見舞いに行くというのが、大きな追加点です。

あずきが国語の教科書の朗読を聞いていなくて、先生に怒られるというのは原作通りですが、教科書の内容が牛の出産の描写になっていて、話をじわじわと盛り上げています。教科書の内容は原作には何もなく、雪室さんが脚本で入れたのかと思っていましたが、アフレコ台本を見ると「教科書朗読」としか書かれていなく、おそらく牛の話を入れたのは脚本でも絵コンテでもなく、それより後だと思います。意外です。

出産した家庭科の吉野先生のbefore and afterです。

吉野先生が病院に急行したことで、家庭科の実習中に、男子は「子供の作り方」の議論を始めます。この辺りは、ほぼ原作通りです。

家庭科の料理は、原作には何も記述が無く、台本では「カレーとサラダ」になっていましたが、実際は「ハンバーグ」でした。刃物を上げてケンちゃんを督促するあずきです。また、料理のシーンも、某キャベツのような手抜きは無く、タマネギのみじん切りまでちゃんと動かしています。

ケンやまことの間違った知識を聞き、あずきを妊娠させてしまったのではないかと思い悩む勇之助が、この話の見どころです。

原作では家庭科の先生だった年配の先生は、保健の先生ということに。水銀体温計も前世紀の遺物になってしまいましたね。
勇之助が保健室に行ったり、吉野先生の赤ちゃんを眺めていたり、勇之助がバイトを探すといったBパート前半シーンは、アニメのオリジナルになっています。


タコ公園のシーンは、ほぼ原作通りです。アニメの構図も結構原作マンガから取っていることが多いのですが、この無知な男をだましてニヤリという、俯瞰で描いたあずきの表情は原作には無く、絵コンテの片渕さんの力が入ったところでしょう。

ラストの大きく振ったブランコと、青空へ向けたパンアップのカメラワークは、とても印象的なアニメオリジナルのシーンです。片渕さんも記憶に残るシーンだったようで、エッセイに書いています。
WEBアニメスタイル | β運動の岸辺で[片渕須直]第74回 めぐるめぐる季節感の中で
勇之助が交換日記に書いていた名前ですが、ひとつは「あかねちゃん」に入れ込んでいた雪室さんが付けた、娘さんの名前ですね。脚本に書いてあったのか、イラストの平田さんが気を利かせて入れたのか、そのへんはよくわかりません。
WEBアニメスタイル COLUMN
次回「あずきちゃん」はジダマが主人公です!