「サザエさん」作品No. 7317 「かわいいトーフ屋さん」 (2015年8月9日放送)
チャルメラの代わりにホルンを吹く女子高生とうふ屋さんのお話でした。自転車で峠は走りません。
ホルンと言えば普通はこちらの「フレンチホルン」を思い浮かべますが、これだと大きさ50cmくらい、重さも3キロ程度あって、とても首から下げて自転車に乗るような楽器ではないのです。
ところが、実際の作画では、
こんな感じで、すごく変な大きさのホルンを使っています。もしかすると、脚本、作画のどこかで、ホルンを勘違いしているか、あるいは意思疎通がうまくいっていなかったのはないかと疑問がわきました。
(出典:図解音楽事典(白水社))
というのも、とうふ屋で油揚げも売っているように、ホルンも広義には非常に様々なタイプがあり、角笛やポストホルンだと、何とか首から下げて使える程度の大きさです。脚本家がポストホルンのようなものをイメージしていたのに、作画でフレンチホルンにしてしまったのかな、など可能性を考えましたが、どうもしっくりきません。
タイトルコール画面でイクラちゃんの吹いているのがホルンの元祖、角笛であるのを見ても、演出家が、いろいろなホルンのあることは重々承知していたことはわかります。
(画像は渡辺楽器店より引用)
その疑問はこの「ミニホルン」あるいは「ポケットホルン」なるものの発見で解決しました。作画を見ても、大きさ、細部どこを見てもこれです。しかし、この「ミニホルン」が演奏会で使われたのは見たことがなく、値段的にも、ホルン奏者の余興、あるいはフレンチホルンが大きすぎる子供に使われるものでないかと思います。演奏は全くわかりませんが、普通のフレンチホルンとは調が違うようなので、子供向けではないかもしれません。いずれにしても知っている人はかなりホルン通の人なのではないでしょうか。
逆に、このミニホルンをイメージしていなければ、ホルンを吹きながらとうふを売り歩くなんという脚本は書けないのではないかと思います。他にもさりげなく「部活の合宿が山梨で」というセリフがありましたが、調べてみると河口湖あたりは音楽系合宿の盛んなところで、そのあたりの知識が無ければ「山梨で」なんていう具体的地名は出てこないはずです。
ホルンに関する蘊蓄などは一切出てきませんでしたが、実は大変マニアックな内容の「サザエさん」であったような気がします。そう思って見直すと、冒頭のホルンの音も、ちゃんとホルンらしい音がしていますね。これを演奏した人が黒幕だったりして…。
ホルンと言えば、2012年にも雪室さんの脚本で「もう一人の花沢さん」という、ホルンを吹く女性の話がありました。
ホルンなんて有名な独奏曲も少ないし、オーケストラの中で最も地味な楽器の一つなので、こんなに持ち上げられるのは結構珍しいと思います。